益子舘

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益子舘の夢
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創業者である父への感謝の思いを込めて A Thought Of Gratitude

父を理解できるようになった

益子舘

2010(平成22)年、益子舘は創業20周年を迎える。益子舘の前身である益子焼温泉健康センターが1990(同2)年11月にオープンした。益子舘オーナーの高橋幸男氏は、20年前に父、正直氏が、この益子の地で温泉施設の経営を始めることを決断したときの思いを、「ようやく理解できるようになった」と語る。

「親爺が決断したのは50歳のとき。私も、いまその年齢になりました。私は当初反対したのですが、20年たって、親爺がこの温泉を買い取ったときの気持ちが何となくわかってきました。フロンティア精神というのでしょうかね......」

正直氏から経営を引き継ぎ、女将の美江さんとともに新たな歩みを始めて5年が経過した。「父への感謝の思いを新たにするとともに、これからの益子舘を考えるためにも、もう一度原点を見つめてみたい」

素朴で大らかな男達の夢

益子舘

1988(昭和63)年、地元の有志6人が資金を出し合い、益子の里山で温泉を掘り当てた。「詳しいことはわからない。でも、仕事仲間の男たちが集まって、何かでかいことをやってやろうじゃないか、そんな思いがあったことは想像できる」と幸男氏。素朴で大らかな男たちの夢。ただ、残念ながら明確な将来設計があったわけではない。やがて、ホテルサンシャイン鬼怒川の経営者、正直氏のもとに、温泉譲渡の話しが持ち込まれた。

正直氏は、当時ホテルサンシャイン鬼怒川で営業を担当し全国を駆け回っていた幸男氏を連れ立って、益子町の現地に向った。小高い丘に温泉が湧き上がり、そのお湯をパイプで引いたドラム缶の中に笑顔の子どもの姿があった。「そのときの光景が目に浮かぶ」と幸男氏はいう。

「『ここを買い取ってくれないか』というんだが、どう思う」。父から意見を求められた幸男氏は「鬼怒川温泉の歓楽街で育った私には、周りが田圃だらけのところにお客さんが来てくれるとは、到底思えなかった。正直、ビビりました」と笑う。結局、正直氏は買い取ることを決断した。幸男氏は「この地域は農村地帯だからヘルスセンターのような温泉施設ならば、お金をそれほどかけなくても建設できるし、事業的にもペイできる」と正直氏に提案した。「旅館・ホテルをつくる勇気はなかった」という。

この提案を受け入れた正直氏は幸男氏をプロジェクトリーダーに指名した。銀行からの融資も決まり、温泉施設建設のプロジェクトが動き始めた。

たくさんのお客さんに後押しされて

風のフロアー

当時の構想を幸男氏が語る。「健康センターのような娯楽施設なら、何とか勝算はある。それがうまくいったら、その時、旅館・ホテルをつくろうと考えた。ホテル棟だけをつくればいいように、パブリックスペースだけは、はじめからつくっておく計画でした」。まずは、温泉施設と大食堂、宴会場を備えた2偕建ての建物を建設した。

「1、2年経つと、温泉だけでは飽きられてしまうだろう。そのときは、田舎芝居の興行でお客さまを呼ぼうと思った。自分は芸事が好きでしたから、そこは自信があった。建物は、劇場としての許可もとりました」。1990年11月、益子焼温泉健康センターがオープンした。「お客さんが、ワンサカワンサカ来てくれました。まさにイモ洗い状態だった」とオープン当時の様子を表現する。

寒さに向う季節で、しかも農閑期。絶好のタイミングだった。近くに温泉施設がなかったこともあり、隣接の茨城県からも多くのお客さんが訪れた。オープンから半年後には、ホテル建設が現実味を帯びてきた。「お客さんにたくさん来ていただき、それに後押しされた。旅行業関係の方々からも『泊まるところがほしいですね』と言われるようになっていた」と幸男氏。バブル期で、銀行サイドも融資には積極的な時代だった。2年後の1992(平成4)年9月、ホテル棟が完成。現在の益子舘のかたちが出来上がった。

益子舘の本当の夢 A Ture Dream

父の男気と勘

益子舘露天風呂

「私は、最初は温泉を買うことも、益子で事業を起こすことも反対でした。温泉街の華やかなイメージも、『芸者さんという文化』もない、農村地帯でしたから。20代の青年だった私には、この場所で事業が成功するとは思えなかった。ましてや旅館をつくってリゾート施設としてやっていくことはイメージできなかった」と幸男氏は話す。

父、正直氏は、なぜ、温泉を買い取ることを決意したのだろう――。「使命感というか、何かを感じたのでしょう。男の夢で温泉を掘ってみたのはいいが、その後の事業展開ができず、どうすることもできない。決して少なくないお金を投資していた男たちは不安だったでしょう。それを察した父が男気を出して......」と幸男氏は正直氏の心情を思い遣る。ただ、「救済」のための「男気」だけだったわけではないはずだ。正直氏は、益子での温泉事業の将来を思い描くことができたのだろう。

「うちの父は、すごく勘のいい人です。私と2人で現地に足を運び、自家噴の温泉が湧き上がっている光景を見て、『わかった』と言って帰ったのです。何がわかったのか、私にはわからなかった。ただ父は、(温泉を掘った男たちに)ひとつ条件を出した。『源泉だけではなく、周囲の土地4700坪も全部譲ってもらわなければ買い取らない』と。

いまにして思えば、そのときから、ホテルを建てることをイメージしていたのでしょう」。正直氏は農家の生まれ。中学卒業後、自転車屋に丁稚奉公し技術を身につける。19歳で独立、鬼怒川の温泉地の一角に間借りをして自転車屋を始めた。やがてオートバイの販売も手がけるようになる。その後、車の修理工場、ガソリンスタンド、アパート経営など事業を展開。昭和54年に藤原町町議会議員に当選。昭和61年にホテルサンシャイン鬼怒川を創業する。そして、益子舘の礎を築いた。「父は、無から有をつくるというフロンティア精神を持っている」と幸男氏はいう。

旅館は女将で勝負

益子舘女将

2005(平成17)年11月、益子舘の経営は、正直氏から長男夫婦に引き継がれた。社長には、美江さんが就任した。「せがれ(幸男氏)ではなくて、『何で嫁が社長なの』と思うでしょうね」と幸男氏は笑う。親から子ども夫婦への継承には、少なからず波乱もあった。

正直氏の経営を素直に支え続けていた美江さんが、仕事上の意見の食い違いで一度だけ反発したことがあった。半年間、女将の仕事を離れた。「一度、"お馬鹿さん"があって、父に反発した。後になってみるとそれがよかったと思います。仕事を離れていた期間が、お互いの気持ちを分かりあう時間になりました。経験豊富な方からアドバイスをいただき、自分を考える時間がとれました。わだかまりもきれいになくなりました。

それからは、すべてを私に任せてもらえるようになりました」と美江さんは当時の思いを語る。「嫁の思いが父に伝わったのだろうと思う。旅館は女将で勝負ですから。社長を嫁に託したのでしょう」と幸男氏は話す。

益子との不思議な縁

芳賀富士

幸男氏と美江さんは、益子焼温泉健康センターオープンの翌年、1991(平成3)年に結婚。当初美江さんは、ホテルサンシャイン鬼怒川の社長室で仕事をしていた。1992(平成4)年、益子舘のオープンとともに益子へ。ホテルの一室に寝泊りしながら女将業をスタートさせた。

益子には縁があった。美江さんの祖母が益子の出身。「亡くなった爺ちゃんが、『益子には絶対温泉が出るぞ』と言っていたらしいです」と美江さん。不思議な縁である。美江さんの母、伸子さんがつくった俳句が益子舘の一室に掲げられている。

幼きは 母に連られし 益子町
今は娘に 会えし道にと

自分たちで温泉を掘りたい

益子舘露天風呂

「会社30年説」という言葉がある。幸男氏が、正直氏から経営を引き継ぐまでを「いままでの15年」、それ以降を「これからの15年」と語るのも、それを意識してのことだ。美江さん、幸男氏夫妻は、益子舘の将来像をどのように思い描いているのだろう――。

美江さんが語る。
「これからの15年の間に、もう一つ温泉を掘りたいですね。いまの温泉は譲り受けたものですから。そして、地域のみなさまのための温泉をやってみたい。例えば、お年寄りの方が、ちょっとした時間を利用して気軽に利用していただけるような温泉。『あー、いつもここにいたいね』と思ってくださるような癒しの場をつくれたらなと思っています」。

幸男氏は「もともと地域の健康センターとして始めたものです。原点回帰ではないですが、自分たちの手で温泉を掘って、それを地域の人たちに開放していければと思います。足湯もいいですしね」と語る。「自分がホテルを経営するようになってみて、親爺を理解できるようになった。経営は孤独だということ。そして、ものごとを決断するときは、敢えて苦しい方、大変な方を選んだ方がいいということを。

私が反対した中で、親爺が温泉と土地を買い取ったのは、厳しい選択肢を選んだということでしょう。親爺がその決断をした時と同じ年齢になったいま、女将が新たな温泉を掘りたいという気持ちになっている。巡り合わせを感じます」

本当の夢

ほっとするね益子舘

益子舘の夢。「自分たちの温泉を掘りたい」。そしてその先に、美江さんの夢がある。いまは、そのすべてを明かすときではないことを美江さんはわかっている。

「いつまでもお客さんを待っていられるような......。上質で、ゆったりとした時間が流れるような......」。美江さんの本当の夢の一端である。と

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